本物の芸術作品を鑑賞できるイタリアパビリオンへ行く
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南ヨーロッパの国 イタリア共和国の「イタリアパビリオン also hosting the Holy See」へ行ってきました🇮🇹 海外パビリオンのあるコネクティングゾーン・セービングゾーン・エンパワーリングゾーンという大屋根リング内に広がる 3 つのゾーンのうち、西側の セービングゾーンにあるパビリオン です。
大阪・関西万博の会場には、非常に工夫を凝らした展示をしているものや、スタッフの方や関わった人々の熱意が素晴らしいものなど、たくさんのパビリオンが立ち並んでいます。そんな数あるパビリオンの中でも最も人気があるパビリオンと言っても過言ではないくらい、多くの人の注目を集めているのがこのイタリアパビリオン。
訪れたタイミングでの待ち時間は、驚異の 5 時間。列の最後尾には「待ち時間 2 時間以上」と書かれた看板を持ち待機しているスタッフの方がいらっしゃいましたが、当たり前のように 2 倍以上の時間を大屋根リングの下で過ごすことになりました。
パビリオンの待機列はほぼ全て大屋根リングの下にあり、お昼ごろに関しては直接日差しが当たることがなくて比較的快適。しかしながら、イタリアパビリオンが位置しているのは会場西側。長い列を待っている間に日がどんどん傾いて夕方に近づいていくと、西日が大屋根リングの下で待つ訪問客に襲いかかります。
上にイタリアパビリオンを正面から撮影した写真を掲載していますが、この場所に来るまでに 4 時間半が経過しています。事前の予約をすることも可能ですが、人気すぎて私は全て落選しました。
約 5,885 万人の人々が暮らすイタリア共和国は地中海に囲まれた南ヨーロッパの国で、首都はローマ。首都であるローマの中には国土面積が約 0.44 平方キロメートルと世界最小である バチカン という国があり、今回訪れたイタリアパビリオン内にはバチカンパビリオンも存在しています。
イタリアのローマと聞いて思い浮かべるのは、かつて存在した超大国・古代ローマ帝国。紀元前 753 年に都市国家として建国されたとされ、その後地中海や黒海沿岸の地域へと支配地域を広げていき 2,000 年以上にわたって存続しました。
長い歴史を持つイタリアは世界有数の文化大国として知られており、今回訪れたイタリアパビリオンは「芸術は生命を再生する」をテーマに様々な芸術作品が展示されています。タイトルにもある通り、展示されている作品の中には貴重な芸術作品の ”本物” があり、日本での公開が初めてのものも。
建物の中へと入り、まず案内されたのは正面にスクリーンのある部屋。映像が映し出されるスクリーンの前にはひな壇のように配置されたふかふかなソファがあり、来館者全員が着席したところで映像がスタート。
内容としてはイタリアの芸術や技術の歴史をまとめたもので、壮大な BGM と共に流れるその映像は短いながらも「いよいよイタリアパビリオンの展示を見るんだ…!」という期待感を高めてくれる素晴らしいものとなっていました。
最後に「芸術は命を再生する」というパビリオンのメインテーマが表示されたところで、映像がズレた…と思いきやよく見ると映像が映されていた壁がくるりと回転するように動いており、メインの展示エリアが目の前に現れました。あまりにも予想外の仕掛けに、私を含めた多くの人が思わず「おお…!」と感嘆の声を漏らしていました。まだ最初の映像展示だけなのに、初手から魅せてくれるイタリアパビリオン。すごすぎる。
扉をくぐり抜けて足を踏み入れた展示室。高い天井に吊り下げられているのは『アルトゥーロ・フェラリンの飛行機』で、こちらは 1920 年に飛行家アルトゥーロ・フェラーリンがイタリアのローマから日本の東京までの初飛行に使用した飛行機 SVA9 型機をオリジナルの図面に基づいて忠実に再現したものだそう。
ローマと東京の間は 18,000km とかなりの距離があり、そんな遠く離れた国同士を結んだ飛行機はイタリアと日本の文化的繋がりをより強固なものにしました。
展示時点では木製の骨組みがむき出しの状態ですが、万博後には日本で航空機として完成させて飛行可能な状態となり、フェラーリンの歴史的な飛行を再現するために使用されるとのこと。100 年前はローマから東京へ飛んできた飛行機が、今度は東京からローマまで飛んでいく…らしい。
入って右手側には 2026 年に開催予定のミラノ・コルティナ 2026 冬季オリンピック・パラリンピックの聖火が展示され、こちらは大阪・関西万博のイタリアパビリオンで初公開されたものとのこと。そもそもイタリアでオリンピックが開催される事自体知らなかったのですが、聖火を自分の目で直接見る機会なんてなかなか無いのでシンプルに感動しました。
回転して開いた扉から入って左手側に展示されているのは、1585 年にドメニコ・ティントレットによって描かれたという『伊東マンショの肖像』という肖像画。描かれているのはヨーロッパにおける日本初の外交使節団「天正遣欧使節」を率いた伊東マンショという人物で、本名を伊東祐益という日本人だそう。
ガラスのケースによって守られた絵画の隣には、この「伊東マンショの肖像」の修復に関するものと思われる映像が画面に映されていました。多くの専門の知識を持つ方々の努力によって、今こうして歴史ある絵画を鑑賞することができているのだなと思うと、奇跡のようなこの機会に作品を目に焼き付けておかねばという使命感に駆られます。
そして展示室正面中央奥側に鎮座しているのは、丸い球体を背中に抱えた男性の像。こちらは大阪・関西万博のイタリアパビリオンのシンボルとなっている『ファルネーゼ・アトラス』という大理石彫刻で、紀元 2 世紀に製作されたとされる世界的な文化遺産です。日本での公開は初で、レプリカなどではなく本物となっています。
西暦 150 年の製作ということで、今からおよそ 2,000 年近く前の作品となるファルネーゼ・アトラス。アトラスとはギリシャ神話に登場する神で、この大理石彫刻は神々の戦いに敗れた巨神アトラスが天空を支える罰を与えられたエピソードを天球儀を担いだ姿によって表現しているのだそう。
高さは約 2 メートル、重さは約 2 トン。ナポリにある博物館からおよそ 10 日かけて飛行機とトラックで万博会場まで運ばれたという貴重な石像の姿に、多くの人が見入っていました。
次の展示エリアへと向かう出入り口の手前にも白い彫像が設置されており、こちらは『復活したキリスト』というルネサンス期の芸術家ミケランジェロによって製作されたもの。1514 年に製作を依頼されたものの、途中でキリストの顔に黒い筋が現れたために放棄され、17 世紀に別の彫刻家が完成させたという歴史があるのだそう。
大きな彫像の前を通って次の部屋へ移動すると、暗い部屋の中で展示されていたのは『キリストの埋葬』というミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョによって描かれた絵画。こちらはバチカンパビリオンの展示となっていて、普段は歴代ローマ教皇の収集品を展示するバチカン美術館に収蔵されているものだそう。
続いての展示エリアでは、イタリアのミラノに拠点を置く モレスキン というメーカーのノートブックをキャンバスとして創作された作品の展覧会が行われていました。
この展示は万博の会期中ずっと行われているものではないようで、週替わりで展示の内容が変わるとのこと。まあまあ広い部屋にたくさんの作品が展示されていて、これがたったの 1 週間のためだけに用意されている(もしかしたら一定期間ごとのローテーションかもですが)というのも驚きですが、このレベルの内容を何パターンも用意しているのも驚きです。本当にこのパビリオン、どうなってんだ…。
展示されている作品はどれも独創的なもので、中にはあまりにもノートブックと聞いて思い浮かべる見た目からかけ離れてしまっているものも。アートの世界は本当に人それぞれ思想や感じ方が違っていて、そんな様々な人たちの感性がこうして同じ場所に集まっているんだなと感じました。
イタリアを含む海外の方が製作した作品もあれば、日本の方の作品もあり、見た目も大きさも多種多様。なんとなく見ていると、これは好きだな、面白いな、というものがあったりなかったり。これもまた人それぞれです。
そんなモレスキンのノートブックの展示の途中にあったのが、多くの人が名前くらいは絶対に聞いたことがあるであろうレオナルド・ダ・ヴィンチの作品。ルネサンス期の芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチが残した『アトランティックコード』という 1,119 枚の文書やスケッチなどのコレクションから 4 点が展示されています。
展示の前には多くの人が列をなしていて、そのすぐ隣では警備員の方が訪れた人たちをしっかり見張っていることから本当に貴重なものなのだということが伝わってきます。
鑑賞する前にスタッフの方が「立ち止まらないでください」「写真ではなく動画での撮影がおすすめです」というような案内をしている通り、基本的には隣をゆっくり立ち止まらずに歩きながら見ていく感じでした。が、やはり貴重な作品を目の前で見ることができるという本来であればありえない状況に、皆つい足を止めてしまっていました。
私もなるべく立ち止まらないように気をつけながら見たつもりですが…果たして立ち止まらずに見ることができていただろうか?あまり自信がありません。
すごすぎる展示を見ながら歩いていくと、上へと向かう階段が現れます。その階段をのぼっていくと、突如視界が開けて庭園のような場所へと出ました。まさかここで屋上に出るとは思っていなかったので、かなり驚かされました。
見て回るのにかかった時間はちょうど 1 時間ほど。列に並んでいた時間も驚くほど長かったですが、展示を見て回るのも全体的に見ごたえがありすぎて他のパビリオンと比べて非常に長くなりました。
展示を見終えた後、あまりにも気合の入ったすごすぎる内容に半ば放心状態となりながら建物の外へと出たところに、ちょうど本物のイタリアちゃんが現れて手を振ってくれたり記念撮影をさせてくれたりしました。イタリアちゃんかわいい。タイミングが良すぎて、なんかもう「万博、満足した…」という気持ちになりました。行ってないパビリオン、まだまだたくさんあるけれども。
最初から最後まで圧倒されっぱなしだったイタリアパビリオン。訪れたのが 7 回目の万博のときで、それまでに様々な国のパビリオンを見て回ってきた後だったので、パビリオンへの力の入れ具合が異次元すぎることがものすごく伝わってきました。
この驚きと感動に満ちたイタリアパビリオンは、2015 年にイタリア・ミラノで開催されたミラノ国際博覧会で日本が美しいパビリオンを建てたことへの恩返しでもあるのだそう。
調べてみると、ミラノ万博での日本館は 8~9 時間待ちという、大阪・関西万博のイタリアパビリオンの 2 倍近い待ち時間になっていた日もあり、そんなに待つなら日本に行くという冗談も飛び出すくらいだったそう。
これだけのパビリオンを日本で用意してくださったイタリアの方々には感謝しかないですし、それだけの関係性を築いてきた日本の関係者の方々にも「ありがとう」と言いたいですね。いつの日か、実際にイタリアにも行ってみたいなと思いました。