Hiratake Web ロゴ

100年近く前の建物が残る神戸税関へ行ってきた

投稿した日
更新した日
書いたひと
icon
ひらたけ

全国を 9 つの区域に分けて管轄している税関のうち、兵庫県と山口県を除く中国地方、四国地方を管轄している 港町・神戸にある神戸税関へ行ってきました🏢 輸出入貨物の通関や関税等の徴収、密輸の取締りなどを行う神戸税関ですが、一部が一般人にも公開されており無料で中へと入ることができるようになっています。


神戸税関へは、JR 三ノ宮駅や阪急神戸三宮駅などから歩いて 20 分ほど。新幹線の停車する新神戸駅から続く三宮のメインストリートであるフラワーロードを、神戸港の方へと歩いた先にあります。

阪神高速、国道などの高架が上下に重なる神戸らしい光景を眺めながらその下をくぐると、目の前に現れるのは堂々たる佇まいのレトロな建物。税関本庁前交差点の角に面したところには円柱型のシンボルタワーがあり、その上では税関旗がはためいています。

神戸税関の外観の写真

物流関係など、関連する仕事に携わっていないとなかなか関わる機会のない神戸税関ですが、中にある広報展示室や中庭は一般の人でも見学が可能。平日であれば 8:30~17:00、土日祝は 9:00~16:30 と時間は決まっていますが、入口で警備員の方の指示に従って氏名や住んでいる都道府県と市区町村、電話番号を記入すると中へと入れてもらえます。料金はなんと無料。

最初に足を踏み入れることになるのは、外からも見えていた円柱型の塔部分。中は吹き抜けになっており、上の階の窓から差し込む光が白い柱や壁を照らして非常に綺麗です。足元には 8 つほどの円を花のように重ねた模様が描かれていて、その周りをラーメンどんぶりに描かれていそうな渦巻き模様が囲んでいます。

神戸税関の建物は様々な映画やドラマのロケ地にもなっているそうで、2018 年に放送された NHK 連続テレビ小説『まんぷく』ではこの塔部分の 1 階で撮影が行われたそう。

神戸税関のシンボルタワー内部の写真

一般の人が見学できるのはこの東門エントランスホールと、奥にある広報展示室と中庭の 3 箇所。写真撮影も可能とのことだったのでスマホで写真を撮りながら中の展示を眺めていると、職員の方が「これから職員ガイドを行うので良かったらどうぞ」と声をかけてくださったので、せっかくなので参加してみることに。

土日祝限定で行われているという神戸税関の職員ガイドは 13:00 からの回と 15:20 からの回の合計 2 回行われていて、今回参加したのは 13:00 からの回。広報展示室や中庭を税関職員の方が 30~45 分ほどかけて案内してくださいます。こちらのガイドも料金は不要、無料で神戸税関に関する詳しいお話を聞くことができます。

正直なところ、休日にわざわざ税関までやってくるもの好きなんてそんなに居ないだろうとか思っていたのですが、職員ガイドを聞くために集まった人数は 10 人ほど。思っていたよりも多くて驚きました。

神戸税関の中庭から見た旧館の写真

まず最初に案内されたのは、神戸税関の中庭。後ろを振り返ると、神戸税関の塔部分がよく見えます。神戸税関の建物を外から見ると東門の上にひとつだけ時計が付いているように見えますが、実は時計は 3 つ存在。360 度どこからでも見えるように時計が取り付けられています。

現在は倉庫などが建ち並んでいますが、かつては国道 2 号線よりも南側は全て税関の土地だったそうで、税関内のどこからでも時間を知ることができるようにしているのだとか。また、光が反射して見えなくならないよう時計にはガラスは付いていないとのこと。

神戸税関の新館のガラスに映る旧館の写真

塔の上にある税関旗は、右上から左下に向かって斜めに 2 分され、左上半分が白色、右下半分が青色に塗られていて、中央には赤い日の丸が描かれたもの。青いところが海と空、白いところが陸を表しているそうですが、制定された明治 25 年には飛行機による貨物の輸出入はなかったため、青は海のみを表していたのだそう。

飛行機が一般的な時代に税関旗が制定されていたら、もしかすると白と青だけでなく空の色を加えた 3 つに分かれた見た目になっていたかもしれませんね。

中庭に入って正面には大きな窓ガラスが嵌められていて、このガラスに反射して映る神戸税関はフォトスポットになっているとのこと。この日はあいにくの曇り空でしたが、綺麗な青空が広がる日にはもっと美しい景色が見られるそうです。

神戸税関の中庭に設置されたベンチの写真

現在の神戸税関の庁舎は 3 代目で、建てられたのは 1999 年。今からおよそ 100 年前の 1927 年に建てられた 2 代目庁舎を保存・活用しながら建てられたものとなっていて、最初に訪れた塔部分やその周辺が 2 代目庁舎がそのまま残されている部分です。

中庭の部分は 2 代目庁舎時代には屋内だったそうで、御影石でつくられていたカウンターが並べられ職員の方と税関を訪れた方がやり取りしていたようです。御影石でつくられたカウンターは、もったいないということで現在は綺麗に整備された中庭にベンチとして置かれています。

神戸税関の広報展示室の展示の写真

建物内へと移動し、ここからは広報展示室で神戸税関の歴史や税関の業務についての話へと移ります。神戸税関の歴史は古く、前身となるのは慶応 3 年の兵庫開港に伴い江戸幕府が開設した兵庫運上所。明治時代に入り、全国の運上所を税関という呼称に統一することが決定され、明治 6 年に「神戸税関」となりました。

明治 6 年(1873 年)に完成した神戸税関初代庁舎は、正面に皇室の紋章として使われている菊の紋章が輝く立派な建物だったそう。

広報展示室には神戸税関の初代庁舎、2 代目庁舎、3 代目現庁舎の模型がそれぞれ並べられていて、どのように建物が変わっていったのかが分かるようになっています。2 代目庁舎の模型にはボタンが付いていて、押すと模型が上下に 2 つに割れて、建物内の様子が見えるようになるという仕掛けもされていました。

職員ガイドの際、税関職員の方がボタンを押して開いた際に「あれ、お~!っていう反応がない…」と残念そうにされていたのと、その直後に参加者がそろって「お~!」と声を上げたのが関西らしくて面白かったです。

神戸税関の広報展示室の展示の写真

神戸といえば、1995 年に発生した阪神・淡路大震災によって甚大な被害を受けた街。2 代目庁舎も大きな被害を受け、昭和 2 年に竣工した後に増築された建物は地震によって崩れたのですが、最初に建てられた現在も残っている部分はほぼ無傷の状態だったそう。

そんな地震を乗り越えた建物を活用しながら 1999 年に竣工した、現在の 3 代目庁舎。こちらは船の形をイメージして建てられたそうで、言われてみればたしかに上部が段々になっていて船っぽい見た目です。

神戸税関の広報展示室の展示の写真

神戸税関の歴史や建物についての話を聞いた後は、輸出入が禁止・規制されている物品についてやそれらの取締りについての話へ。生きている動植物やその製品・加工品の中には、絶滅のおそれのある野生動植物を保護することを目的とした「ワシントン条約」によって国内への持ち込みが規制されているものがあるそう。

展示室内にはライオンのはく製が置かれていて、こちらは平成 14 年(2002 年)に輸入者が輸出国発行の許可証を税関に提示することができず、所有権を放棄したものだそう。その後、ワシントン条約に該当する物品の不正輸入を防止するために税関にて展示することになったとのことです。オスのアフリカライオンだそうで、見ているとなんだか悲しい気持ちになります。

ワシントン条約で規制されているのは野生の動植物で、野生ではない栽培されたものは大丈夫だそう。たとえばバニラアイスなどに使われているバニラビーンズはワシントン条約の対象となる約 30,000 種の中に含まれていますが、大半が栽培されたものなので問題ないといった感じです。

神戸税関の広報展示室の展示の写真

輸出入が禁止・規制されている物品についての説明の次は、不正薬物や拳銃などの密輸に関する内容。石の球体の中に覚醒剤を隠して密輸しようとしたり、ろうそくの中に大麻草を隠して密輸しようとしたり、木製の布袋像の内部をくり抜いて拳銃を隠して密輸しようとしたりと、様々な方法で危険なものを日本へ持ち込もうとする人たちの手口の一部が紹介されていました。

密輸用に模造された鉄鉱石の実物も展示されていて、こちらも中に覚醒剤を隠して密輸しようとしていたのだそう。私だったらいくら観察しても絶対に分からないと思うのですが、それを見つけ出す税関職員の方々の仕事には脱帽。

鉄鉱石に隠されていたこちらのケースでは、一般的にばら積み貨物船という船によって運ばれることの多い鉄鉱石がコンテナで運ばれており「コンテナ 3 つ分の鉄鉱石からとれる鉄は大した量にならないだろう」というところから「おかしい」と判断し、覚醒剤を発見したのだそうです。どれだけ「正常な状態」を知っているかが大事なのだとお話しされていました。

神戸税関のカスタム君の写真

最後には、麻薬探知犬をモデルとした税関のイメージキャラクター「カスタム君」と一緒に写真撮影ができるスポットや、職員の方が手作りしているという缶バッジが入ったガチャガチャがありました。ガチャガチャを回すためのコインは、建物や広報展示室の写真を SNS に投稿するともらえるとのこと。

ガチャガチャの上に「コインは広報広聴室にてお渡しします」と書かれた案内があったのですが、直前まで麻薬の話を見聞きしていたせいでコインをコカインに見間違えて変な声が出ました。


神戸税関へ行ってきましたが、最近何かと話題になることの多い関税についてや、税関でどのようなことが行われているのかについて知ることができて非常に勉強になりました。たまたま参加した職員ガイドがものすごく分かりやすく、ひとりで展示を見ているだけでは知ることのできなかった話を色々聞くことができたので、こちらも参加して良かったです。

今回入ることができなかった新館やその屋上、訪れたタイミングでは公開されていなかった壁に描かれた絵などは、今年 11 月 15 日に開催される「オープンカスタムス 2025」というイベント開催時に特別に公開されるのだそう。今回の神戸税関訪問が非常に満足度が高かったので、こちらもぜひ訪れたいです。