特別名勝に指定されている庭園「栗林公園」を歩く
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国の特別名勝にも指定されている 香川県高松市の栗林公園へ行ってきました🌳 特別名勝に指定されている文化財庭園の中では最大の広さを持つという 栗林公園 は、高松藩主であった松平家の別邸として歴代の藩主が修築を重ね、300 年近く前に完成しました。そんな歴史ある高松の栗林公園を訪れ、園内の景色を楽しんできました。
栗林公園 があるのは、JR 栗林公園北口駅から徒歩 3 分、高松琴平電気鉄道の栗林公園駅から徒歩 7 分ほどの場所。今回はことでん琴平線の列車に乗車し、栗林公園駅から栗林公園のメインゲートと思われる東門まで歩いて向かいました。
江戸時代には「切手御門」と呼ばれていたという東門を抜け、左手側にあるチケット売り場で入園券を購入。人と話さなくても購入することができる自動券売機が数台設置されていて、支払い方法も交通系 IC カードなど様々なキャッシュレス決済に対応していました。料金は大人 1 枚 500 円です。
栗林公園の起こりは 16 世紀後半にまで遡ります。この土地の豪族であった佐藤氏によって築庭されたものが始まりだとされ、1625 年ごろには当時の讃岐国領主の 生駒高俊 公により紫雲山を背景に南湖一帯が造園されて、現在の栗林公園の原型が形づくられたといいます。
その後、1642 年に生駒氏に代わって高松の地を与えられ入封した初代高松藩主・松平頼重公(水戸黄門としても知られる水戸光圀公の兄)に引き継がれた庭園は、1745 年に高松藩 5 代藩主・頼恭公の時に完成。明治維新までの 228 年間にわたって高松松平家の下屋敷として使用されたのだそう。
一般に公開されるようになったのは 1875 年のことで、1953 年には全国で 8 番目となる国の特別名勝の指定を受けることになりました。西側の紫雲山を含めた総面積は約 75ha、平庭部の面積だけでも約 16ha と、文化財庭園の中では最大の面積を誇ります。金沢の兼六園の面積が約 11ha、水戸の偕楽園(本園)の面積が約 13ha、岡山の後楽園の面積が約 14ha ということを考えると、その広大さが分かります。
チケットを手に中へと進むと、見えてくるのが「讃岐民芸館」という建物と、その奥に構える「商工奨励館」という立派な建物。讃岐民芸館は、その名前の通り香川をはじめ各地の焼物や木工品、漆器など生活に密着した民具が収蔵・展示されている施設となっています。
商工奨励館は本館・西館・東館・北館とそれらを結ぶ廊下によって構成された趣のある建物で、明治時代に「香川県博物館」として建築されたものだそう。内部には栗林公園の紹介や香川の伝統工芸品の展示などがされているほか、食事やスイーツが楽しめる「Café de Ritsurin」というカフェが併設。
建物内をうろうろとしていると壁に大きく年表が描かれていて、「栗林公園の歴史的なやつなのかな?」と思いながら見てみたところ、思いっきり「讃岐うどんの歴史年表」と書かれていたのが不意打ちすぎて笑ってしまいました。弥生時代の「小麦の栽培が始まる。」から現在までの、讃岐うどんの歴史を学ぶことができました。さすがうどん県…。
階段を登って 2 階へと向かうと、世界的家具デザイナーだというジョージ・ナカシマ氏のテーブルや椅子の展示がされていました。ジョージ・ナカシマ氏は米国国籍の日系二世で、高松を訪れた彼は日常の中で使い続けてきた民具をさらに洗練された形に再生して長く愛用しようという「讃岐民具連」の運動に共鳴。世界が注目する家具が香川から発信されてきたのだそう。
家具が展示された 2 階にはベランダのような空間があり、外に出て栗林公園の南側の景色を眺めることができるようになっていました。
ここからはいよいよ栗林公園内を巡っていきます。明治の終わりに発行された高等小学読本によると、栗林公園は日本三名園とされる金沢の 兼六園・岡山の 後楽園・水戸の 偕楽園 よりも「木や石に風雅な趣がある」と記されているのだそう。私はこれまでに日本三名園と呼ばれる 兼六園、岡山後楽園、偕楽園 を 3 つとも巡ってきたので、それらよりも趣がある庭園とは一体どのようなものなのか、とても気になるところです。
チケット売り場に置いてあったパンフレットによると、栗林公園内を散策するコースには「南庭回遊コース(所要時間約 60 分)」と「北庭回遊コース(所要時間約 40 分)」という 2 種類のコースがあるとのこと。
南庭回遊コースの方が、園内随一のビューポイントである「飛来峰」があったり、道中に食事や軽食を楽しむことができるお店があったりと、メインのルートっぽい感じ。というわけで、まずは「南庭回遊コース」のルート案内に従って園内を回っていくことにしました。
庭園部分の中心付近にある、背丈の高い立派な 5 本の松の木は、昭和天皇をはじめ大正時代に栗林公園を訪れた方々がその記念にお手植えされた松。当時皇太子であった英国王エドワード 8 世がお手植えされたという松の木もありました。
お手植松のすぐ横を歩いていくと、見えてくるのが北湖という大きな池と、そこに架かる「梅林橋」という神社などによくありそうな見た目の赤と黒に塗られた橋。北湖は南庭では南湖に次ぐ大きさの池で、中央北側と南側にはそれぞれ島が浮かびます。
池の東側には富士山の形をした「芙蓉峰」が築かれ、この梅林橋あたりから見ると富士山の形をしているように見えるのだそう。この「梅林橋あたりから見ると富士山の形をしている」という説明を、芙蓉峰の上に設置された看板で読んだため、梅林橋から芙蓉峰を眺めるということができなかったのがやや残念。これから栗林公園を訪れる方は、ちょっと意識して見てみると良いかもですね。
梅林橋を渡ると、木陰が続き雰囲気のある細い道が現れます。その手前には「茶室 日暮亭」の看板が建てられていて、道沿いには明治時代初期に建てられた石州流の茶室「日暮亭」が佇みます。土日祝日には茶室で抹茶やアイスクリームなどを味わうことができるのだそう。
日差しに明るく照らされた木々に囲まれた穏やかな道を抜けると、目の前に現れるのは「石壁」と呼ばれるゴツゴツとした岩肌。その手前には西湖という池が広がり、丸くて一箇所に切れ込みが入った葉っぱが水面を埋め尽くすくらいにプカプカと浮かんでいます。
この石壁は「赤壁」とも呼ばれ、中国の揚子江(長江)左岸にある景勝地にて詩人の蘇軾が「赤壁賦」を詠んだことで有名な赤壁にちなんで名付けられたとも言われているのだそう。
石壁からは「桶樋滝」という滝が西湖へと流れていますが、こちらは藩主の観賞用として作られたもので、紫雲山の中腹に置いた桶まで人力で水を汲み上げて滝を作り出していたようです。現在は西湖の水をポンプで汲み上げているようですが、人力で水を運んでいた時代はさぞ大変だったことでしょう。
西湖の近くに佇むのが旧日暮亭で、1700 年前後に建てられた「考槃亭」という茶室が現在の場所へと移されたもの。江戸時代初期の大名茶室を今に伝える、貴重な建物となっています。こちらも公開日は土日祝日のみとなっていて、平日に訪れた今回は柵の外から遠目に見るのみでしたが、まさに庭付きの古風な茶室という外観をしていました。
南庭回遊コースには、飛び石や階段が続く細い道などがところどころにあり、ただ平坦な道を歩くだけではなく様々な変化を感じながら巡ることができます。これらは園内マップでは「車いす通行困難路」として記載されていて、身体が不自由な方が事前に他の道を選びながら園内を巡ることができるような配慮もされていました。
栗林公園内を南庭回遊コースの案内に従って歩き、ようやく半分といったところで少し休憩をすることに。道中には何箇所か喫茶店的なお店があるのですが、今回は「吹上亭」という南湖のほとりに佇むお店に立ち寄りました。吹上というのは栗林公園の水源地で、園内の池の水はすべてここでまかなっているのだそう。
吹上亭では、シンプルなソフトクリームをいただきました。藁に刺さっている串団子や「おいりソフト」なる変わった見た目のソフトクリームなどもあって気になりましたが、空腹度合いの都合で断念。支払い方法は現金のほか各種バーコード決済が利用可能で、PayPay に楽天ペイ、au PAY、d 払い、メルペイなどやたら種類が豊富でした。
お店のすぐそばには広さ約 7,900 平方メートルの大きさの南湖が広がり、正面には 偃月橋 という園内で最も大きい橋の姿を見ることができます。池には 3 つの島と「仙磯」と呼ばれる岩組、それから偃月橋があり、周囲を散策したり舟で回遊しながら景色を楽しむことができるように造園されているとのこと。
園内には船乗場があり、別途乗船券を購入することで船頭さんの解説を聞きながら和船に乗って園内を眺めることもできるそうで、偃月橋の近くを舟がゆったりと進んでいく様子を見ていると、なんだか心が穏やかになるようでした。乗船料は大人 1 人 850 円とのこと。
ソフトクリームを食べながら足元の南湖を覗くと、ものすごくたくさんの鯉が水中でわちゃわちゃと泳ぎ回っていました。私が今回購入したソフトクリームのコーンの破片や、水辺で軽食を食べる人の食べかすなどを求めて集まっているのでしょうか。日本庭園の池といえば色鮮やかな鯉、見ていてなんだか落ち着くのは日本人だからですかね?
吹上亭にてひと休みした後は、いよいよ園内随一のビューポイントだという 飛来峰 へ。藩主が江戸を懐かしみ、富士山を模して造らせたと伝えられる築山で、飛来峰という名前は中国杭州にある名勝地から得たものだといわれています。
飛来峰から南湖を眺めると、まさに絶景と呼ぶべき景色が広がっていました。西側にそびえる紫雲山を背景にして、池の奥には掬月亭という庭園の中心的な数寄屋造りの建物、手前側には美しいアーチを描く偃月橋が架かります。笠帽子を被った人たちが乗る和船がすいと進んでいくのがより一層風情を感じられて良いです。
その後は迎春橋を渡り、掬月亭の前を通り、芙蓉峰などを通って東門へと戻ります。道中も大変美しい景色が続いていて、歩いていてずっと楽しかったです。
南庭回遊コースを歩いた後は、せっかくなので北庭回遊コースも歩いてみることに。こちらは南庭回遊コースと比べると歩いている人の数も少なく、飛来峰のような目玉となるスポットが少ない印象。北門近くには、栗林公園の趣旨や沿革などが刻まれた「栗林公園碑」が建てられていたり、芝生広場のそばに「松平頼壽閣下像」という高松松平家当主の像が建てられていたりしました。
高松市にある栗林公園を歩いてきましたが、ただ広いだけでなく景色の変化に富んでいて、園内を歩いていて飽きが来ないような工夫が感じられました。また、前に茨城・水戸の偕楽園を訪れた際には道に迷いまくって大変だったのですが、栗林公園ではこまめに矢印付きの「南庭回遊コース」と書かれた看板が建てられており、安心して散策することができました。
青紅葉が美しい場所もあり、この時期の青々とした楓の葉も見事ではありましたが、秋の紅葉シーズンにはまた違った美しい光景が見られるのではないかと思います。季節ごとに異なる顔を見せるのも日本庭園の魅力だと思うので、次に訪れる際にはぜひ秋や冬など今回とは違う季節に訪れてみたいです。